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太陽光・蓄電池システムと家庭内電力品質:高調波、電圧変動、対策技術

Tags: 太陽光発電, 蓄電池, 電力品質, パワーコンディショナ, 高調波, 電圧変動, 技術解説

電気料金の高騰が続き、ご自宅への再生可能エネルギーシステムの導入を検討される方が増えています。太陽光発電や蓄電池は、環境負荷の低減に貢献しつつ、電気代の削減にも繋がる有効な手段です。システム選定にあたっては、発電効率や蓄電容量、経済性などが重要な要素となりますが、システムの「電力品質」への影響も、技術的な視点から考慮すべき重要な側面の一つです。

家庭用再エネシステムにおける電力品質の技術的側面

電力品質とは、供給される電気の電圧、周波数、波形などが、機器を安定して安全に動作させるために適切な状態を保っていることを指します。家庭に供給される電力は、通常、電力会社から安定した品質で提供されています。しかし、ご自宅に太陽光発電や蓄電池システムを導入し、ご自宅の配電網に接続すると、これらのシステムが家庭内の電力品質に影響を与える可能性があります。

家庭用再エネシステムにおいて、電力品質に最も大きく関わる機器はパワーコンディショナ(PCS)です。太陽光パネルが発電する直流電力を家庭で使用できる交流電力に変換したり、蓄電池の充放電を制御したりする役割を担います。この直流から交流への変換プロセスや、系統との連携動作において、電力品質に関する課題が発生することがあります。

再エネシステムが家庭内電力品質に与えうる影響

再エネシステムが家庭内の電力品質に与えうる主な影響として、以下の点が挙げられます。

高調波の発生

高調波とは、基本波(家庭で使用される交流電力の周波数、日本では50Hzまたは60Hz)の整数倍の周波数を持つ電流や電圧のことです。PCSは半導体スイッチングによって直流を交流に変換するため、理想的な正弦波とは異なる波形が出力されることがあります。この波形の歪みが、高調波となって家庭内の配電網に流入する可能性があります。

高調波が増加すると、以下のような影響が考えられます。

日本の家庭用PCSは、JIS規格などによって高調波抑制に関する厳しい基準が設けられており、単体の機器から発生する高調波は抑制されています。しかし、複数の非線形負荷(PCSもその一つ)が接続されたり、配電網の特性によっては影響が顕在化したりする可能性もゼロではありません。

電圧変動(フリッカ)

太陽光発電システムの発電量の急激な変動や、蓄電池の大きな充放電によって、家庭内の電圧が一時的に変動することがあります。これを電圧変動、あるいは点滅(フリッカ)と呼びます。

例えば、太陽光発電が急に曇りで出力が低下したり、晴天に戻って出力が急増したりする場合、その変化に応じてPCSが系統との間でやり取りする電力が変動し、家庭内の電圧に微小な変動が生じることがあります。また、大容量の蓄電池が急速に充電を開始したり、放電を停止したりする際にも同様の電圧変動が発生しうる可能性があります。

電圧変動が大きくなると、照明器具のちらつきや、一部の機器の動作不安定を招く可能性があります。

その他の影響

系統連系システムでは、停電発生時や電力会社の系統復旧時などに、PCSが系統から切り離されたり、再接続されたりする際の動作が電力品質に一時的な影響を与える可能性も考慮されます。ただし、これはPCSに組み込まれた保護機能や制御によって、影響が最小限に抑えられるように設計されています。

電力品質問題への技術的対策

再エネシステム導入による電力品質への影響を抑制し、安定した運用を確保するための技術的な対策は、主にシステム機器側の設計と、適切なシステム構成・設置にあります。

PCSにおける高調波・電圧変動抑制技術

最新の家庭用PCSには、高性能なデジタル制御技術が採用されており、出力波形の高調波含有率を極めて低く抑えるためのPWM(パルス幅変調)制御や、アクティブフィルターなどの技術が搭載されています。これにより、PCS単体からの高調波発生は十分に抑制されています。

また、系統電圧や周波数を常時監視し、適切に無効電力制御を行うことで、系統電圧の変動を抑制する機能を持つPCSもあります。電力会社との系統連系技術基準に基づき、異常時には迅速に系統から解列する機能も、電力系統全体の安定性を保つ上で重要です。

高品質な機器選定の重要性

電力品質の観点からも、信頼できるメーカーの高品質な機器を選定することが重要です。特にPCSの仕様において、高調波歪み率(Total Harmonic Distortion: THD)などの項目を確認することは、出力される交流電力の品質を知る上で参考になります。国際規格や国内規格(IEC、JISなど)に適合している製品を選ぶことで、基本的な電力品質性能は確保されます。

システム設計と設置

ご自宅の既存の配電設備の状況や、導入するシステムの規模、他の電気機器との関連性なども、電力品質に影響を与えうる要素です。専門的な知識を持つ施工業者に相談し、適切なシステム構成や配線設計を行うことが、電力品質の問題を未然に防ぐ上で効果的です。

まとめ

家庭用太陽光発電や蓄電池システムの導入は、環境負荷低減と経済性向上に大きく貢献します。これらのシステムの安定した、そして家庭内の他の電気機器に影響を与えない運用のためには、電力品質という技術的な側面への理解も重要です。

現代の家庭用再エネシステム機器は、高調波や電圧変動を抑制するための高度な技術が組み込まれており、通常の使用において大きな問題が発生する可能性は低いと言えます。しかし、システムの選定にあたっては、機器の技術仕様を確認したり、信頼できる専門業者に相談したりすることが、長期的な安心と安定稼働に繋がります。エコで経済的な再エネ生活を実現するために、これらの技術的な側面も検討されてみてはいかがでしょうか。